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取材日: 昇龍道

御柱上社木落し・川越し 長野県諏訪大社上社

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あいにくの雨だった。未明から降り始めた雨は、私が木落坂の上に到着した頃、延々と降り続いていた。近くにいた地元の方から情報を仕入れる。雨で中止はないのか。雨の中ではカッパを着てやるのか。時間は変更されるのか。初めて訪れる祭で、一番困るのは情報がないこと、次に何が起こるのか分からなくてはこちらも、準備のしようがない。雑談もしながら、いろいろと聞いてなんとかイメージは出来てきた。
目の前ではこの日最初の木落しを行う前宮三之御柱、通称「前3」を受け持つ地区の氏子が入念に準備をしていた。「めどでこ」と呼ばれる柱に取り付けられた角のような足場にそれぞれ10人ほどが鈴なりになって乗っている。今にも始まるかという勢いで掛け声を上げながらやっているのだが、すぐにめどでこの人は他の人に入れ替わってしまう。なぜだろうと考えていたのだが、すぐに答えが出た。考えてみれば、御柱は6年に1度、坂落としは1発本番。坂落としのめどでこに乗れるのはわずか20人なのだ。ならばせめて、坂上でめどでこに登るだけでも・・・ということなのだろう。と勝手に推測していた。待つこと3時間、いよいよというところで坂上で掲げられた赤旗がGOサインを意味する白い旗に変わり、花火がドドンとなって大歓声、次の瞬間大きな御柱が前のめりになって滑りだしていく・・・わずかな時間のことだが、こんなに興奮を覚える祭はなかなかない。
と、余韻にひたる間もなく、今度は坂下の桟敷席に移動した。念のためチケットを購入し桟敷からの撮影も試みる算段だ。事前に調べた情報ではあまり期待もしてなかったのだが、運良く最前列の席が取れた。しかも本来なら逆光ぎみで距離があるから条件は良くないのだが、幸いにも雨は止んで薄曇りの好条件だった。ここでも何度も同じ動作が繰り返され、めどでこの入れ替わりが何度も続いたが、もう一度見ているだけにこちらの心の準備もできている。やがて旗の色が変わり、御柱が坂を滑りだす、距離は遠いが、なかなかの迫力だ。あっという間に終わってしまったが、また来たくなるものだ。
桟敷での坂落しを見届けたあとは急いで川越しの会場に向かう。ここでは御柱を神社に入れる前に川を通すことで祓い清める意味があるとか何かの本で読んだことがあるが、実際のところそんなことはどうでもいい気分だ。とにかく面白いものを見たい!そんな単純な気持ちがみんなを祭に駆り立てているのだと思う。御柱が到着すると、各組とも趣向をこらした催し物をやっている。意外かも知れないが、御柱の本筋以外のところはかなり茶目っ気たっぷりのお祭りだ。本番の川越しは、なかなかの迫力、川に落ちて行く時も凄いが引き上げる時の雰囲気もまた凄い。こうして私の御柱初体験の1日は終わった。
今回、御柱に行くことになったのは、日頃お世話になっている石田先生の「デンさん、今年は御柱行こまい」の一言だった。1ヶ月ほど前、それまで御柱のことをあまり気にもしていなかった私も調べてみたら、そのスケールに驚いて「これは行くしかない」となった。しかし先生を連れて、撮影場所を探してウロウロするわけにはいかないので、行くなら一日通しで桟敷から楽しめる下社がいいと分かったので、その一週間前に下社の木落坂の下見も兼ねて上社の木落しを見に来たのでした。行ってみて分かったこと、「祭人ならば、御柱は必ず見るべし」。
それにしても御柱は興味深い祭だ。建御柱を見れば、明らかにトーテムポールに通じている。トーテムポールといえば、縄文遺跡からも多く出ており、縄文人の精霊信仰の中核ともいえるものだ。縄文人と同じ流れを汲むといわれるアイヌ人やインディアンにもトーテムポールがあることからも縄文文化とトーテムポールの関係は深いものだっただろう。一方で御柱が街道を進む姿はこれは曳山の祭を想起させる。曳山の起源は祇園祭と言われるだけにおもしろい。弥生文化の流れを汲み現代にまでつながる大和朝廷の中から生まれたともいえる曳山の祭は、おそらく弥生文化のものだったのではないだろうか。ここで視点を変えて古事記に目を移すと興味深い話が見えてくる。国譲り神話の一節だ。それは、大国主の命が統べる出雲に高天原の神が降りて国を譲り渡すように迫った話だ。大国主命の子であり建御名方命は高天原の神に挑むが敵わず、諏訪の地に根付いたとされる。高天原の神を弥生人、出雲の神を縄文人と置き換えれば、日本の古代史が見えてくるという解釈もあるというが、まさにそれと御柱は符合するようにも見える。諏訪には古代より縄文と弥生の交雑する文化があったのではないか、という仮説も成り立つのではないだろうか。


 

開催時期:寅年と申年の春
ところ:諏訪大社上社と周辺
交通:JR茅野駅から徒歩
公式HP:http://www.onbashira.jp/


 

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木落し坂に向かう直前の本宮四之御柱 担うのは八ヶ岳山麓の氏子

 

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曳き動かされる御柱

 

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めどでこの交代、坂上では何度も繰り返され、そのたびに妙技で綱を降りる

 

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落ちる寸前の御柱

 

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前宮四之御柱 各組が趣向を凝らした催しを行う

 

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前宮四之御柱を受け持つのは祭り会場のある茅野周辺の氏子だけに、会場も熱が入る

 

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坂上の旗が赤から白に変わった次の瞬間、ゆっくりと御柱が動き出す

 

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途中でバランスを崩しそうになるが、必死で食らいつくめでどこの男衆

 

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無事、坂下まで到着し、8回に渡った木落しが終了する

 

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木落し坂から2kmほど離れた場所に川越しの会場がある

 

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川越しの瞬間、木落と異なり誰でも間近に見ることが出来る

 

川の中を進む御柱

 

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川越しが終わると、山出しの行事はすべて終了し、一ヶ月後の里曳きを待つ

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